
札幌市
一九二七、三、廿八、
遠くなだれる灰光と
貨物列車のふるひのなかで
わたくしは湧きあがるかなしさを
きれぎれ青い神話に変へて
開拓紀念の楡の広場に
力いっぱい撒いたけれども
小鳥はそれを啄まなかった
宮沢賢治 詩「札幌市」・1927・3・28
この作品はその4年ほど前に、傷心(妹の死)の北海道旅行の時のスケッチと思われます。
賢治の心象スケッチは、「眼前の」現象に対する自分の反応をスケッチしたものではなくて、過去の記憶を心の中で反芻して、生まれてくるものでした。
1927年3月28日という日の賢治は、終日一人で家の中にいて、読書をしたり思索にふけったりしていたのではないでしょうか。
他にも 数点の作品を書いております。
4年前の妹トシの死にまつわる感情を、この「札幌市」という作品において、「青い神話」として行き着いたはないでしょうか。
「札幌市」と題する賢治のこの詩は、札幌・大通西6丁目の大通公園に、「開拓紀念碑」と刻まれ、大きな石碑がそそり立っています。
札幌市
一九二七、三、廿八、
遠くなだれる灰光と
貨物列車のふるひのなかで
わたくしは湧きあがるかなしさを
青い神話のきれにして
開拓紀念の石碑の下に
力いっぱい撒いたけれども
小鳥はそれを啄まなかった 前の草稿形態 一
札幌市
一九二七、三、廿八、
遠くなだれる灰光のそらと
歪んだ町の広場のなかで
わたくしは 湧きあがるかなしさを
青い神話としてまきちらしたけれども
小鳥らはそれを啄まなかった 前の草稿形態 二
〔遠くなだれる灰いろのそらと〕
三、廿八、
遠くなだれる灰いろのそらと
歪んだ町の広場のなかに
わたくしはこみあげるかなしさを
青い神話としてまきちらしたけれども
小鳥らはそれを啄まなかった 前の草稿形態 三
「札幌市」の作品の草稿は4編も見つかっています。
賢治さんの真面目な人柄が垣間見られるような思いがしますね。
4編の草稿は「宮沢賢治の詩の世界」から引用いたしました。
イメージ写真は「盛岡心情」を運営されているらくださんからお借りしました
開拓精神イメージソング 中島みゆき ヘッドライト・テールライト http://www.youtube.com/watch?v=vYETOse2m88&feature=related