2007年08月02日

薔薇・ハマナス

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朝顔よりはむしろ牡丹のやうにみえる

おほきな はまばらの花だ

まつ赤な朝のはまなすの花です

ああ これらのするどい花のにほひは

もうどうしても 妖精のしわざだ

宮澤賢治 詩・春と修羅  オホーツク挽歌

ハマナスは北国向きの花でしょうか
春から切れ目無く咲いています。
秋にはローズヒップの実が赤くなり これも又可愛いですね。
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詳しいお花の説明は「イーハトーブ花図鑑」を見てね

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オホーツク挽歌  
  
   海面は朝の炭酸のためにすつかり銹びた
   緑青(ろくせう)のとこもあれば藍銅鉱(アズライト)のとこもある
   むかふの波のちゞれたあたりはずゐぶんひどい瑠璃液(るりえき)
   チモシイの穂がこんなにみぢかくなつて
   かはるがはるかぜにふかれてゐる
     (それは青いいろのピアノの鍵で
      かはるがはる風に押されてゐる)
   あるひはみぢかい変種だらう
   しづくのなかに朝顔が咲いてゐる
   モーニンググローリのそのグローリ
     いまさつきの曠原風の荷馬車がくる
     年老つた白い重挽馬は首を垂れ
     またこの男のひとのよさは
     わたくしがさつきあのがらんとした町かどで
     浜のいちばん賑やかなとこはどこですかときいた時
     そつちだらう、向ふには行つたことがないからと
     さう云つたことでもよくわかる
     いまわたくしを親切なよこ目でみて
      (その小さなレンズには
       たしか樺太の白い雲もうつつてゐる)
   朝顔よりはむしろ牡丹(ピオネア)のやうにみえる
   おほきなはまばらの花だ
   まつ赤な朝のはまなすの花です
    ああこれらのするどい花のにほひは
    もうどうしても 妖精のしわざだ
    無数の藍いろの蝶をもたらし
    またちいさな黄金の槍の穂
    軟玉の花瓶や青い簾
   それにあんまり雲がひかるので
   たのしく激しいめまぐるしさ
      馬のひづめの痕が二つづつ
      ぬれて寂まつた褐砂の上についてゐる
      もちろん馬だけ行つたのではない
      広い荷馬車のわだちは
      こんなに淡いひとつづり
   波の来たあとの白い細い線に
   小さな蚊が三疋さまよひ
   またほのぼのと吹きとばされ
   貝殻のいぢらしくも白いかけら
   萓草の青い花軸が半分砂に埋もれ
   波はよせるし砂を巻くし
   
   白い片岩類の小砂利に倒れ
   波できれいにみがかれた
   ひときれの貝殻を口に含み
   わたくしはしばらくねむらうとおもふ
   なぜならさつきあの熟した黒い実のついた
   まつ青なこけももの上等の敷物(カーペット)
   おほきな赤いはまばらの花と
   不思議な釣鐘草(ブリーベル)とのなかで
   サガレンの朝の妖精にやつた
   透明なわたくしのエネルギーを
   いまこれらの濤のおとや
   しめつたにほひのいい風や
   雲のひかりから恢復しなければならないから
   それにだいいちいまわたくしの心象は
   つかれのためにすつかり青ざめて
   眩ゆい緑金にさへなつてゐるのだ
   日射しや幾重の暗いそらからは
   あやしい鑵鼓の蕩音さへする
   
   わびしい草穂やひかりのもや
   緑青(ろくせう)は水平線までうららかに延び
   雲の累帯構造のつぎ目から
   一きれのぞく天の青
   強くもわたくしの胸は刺されてゐる
   それらの二つの青いいろは
   どちらもとし子のもつてゐた特性だ
   わたくしが樺太のひとのない海岸を
   ひとり歩いたり疲れて睡つたりしてゐるとき
   とし子はあの青いところのはてにゐて
   なにをしてゐるのかわからない
   とゞ松やえぞ松の荒さんだ幹や枝が
   ごちやごちや漂ひ置かれたその向ふで
   波はなんべんも巻いてゐる
   その巻くために砂が湧き
   潮水はさびしく濁つてゐる
    (十一時十五分、その蒼じろく光る盤面(ダイアル)
   鳥は雲のこつちを上下する
   ここから今朝舟が滑つて行つたのだ
   砂に刻まれたその船底の痕と
   巨きな横の台木のくぼみ
   それはひとつの曲つた十字架だ
   幾本かの小さな木片で
   HELL と書きそれを LOVE となほし
   ひとつの十字架をたてることは
   よくたれでもがやる技術なので
   とし子がそれをならべたとき
   わたくしはつめたくわらつた
     (貝がひときれ砂にうづもれ
      白いそのふちばかり出てゐる)
   やうやく乾いたばかりのこまかな砂が
   この十字架の刻みのなかをながれ
   いまはもうどんどん流れてゐる
   海がこんなに青いのに
   わたくしがまだとし子のことを考へてゐると
   なぜおまへはそんなにひとりばかりの妹を
   悼んでゐるかと遠いひとびとの表情が言ひ
   またわたくしのなかでいふ
     (Casual observer! Superficial traveler!)
   空があんまり光ればかへつてがらんと暗くみえ
   いまするどい羽をした三羽の鳥が飛んでくる
   あんなにかなしく啼きだした
   なにかしらせをもつてきたのか
   わたくしの片つ方のあたまは痛く
   遠くなつた栄浜の屋根はひらめき
   鳥はただ一羽硝子笛を吹いて
   玉髄の雲に漂つていく
   町やはとばのきららかさ
   その背のなだらかな丘陵の鴇いろは
   いちめんのやなぎらんの花だ
   爽やかな苹果青(りんごせい)の草地と
   黒緑とどまつの列
    (ナモサダルマプフンダリカサスートラ)
   五匹のちいさないそしぎが
   海の巻いてくるときは
   よちよちとはせて遁げ
    (ナモサダルマプフンダリカサスートラ)
   浪がたひらにひくときは
   砂の鏡のうへを
   よちよちとはせてでる
ラベル:四季の花 薔薇
posted by mari at 08:09| 岩手 ☀| Comment(8) | TrackBack(0) | 薔薇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おはようございます^^
宮沢賢治の詩、素敵ですね〜
本当に夏つばきさんは何でもご存知で尊敬します
ハマナスは北海道でよく見かけます
花もきれいですが、オレンジ色の実もかわいらしいですね〜
ハマナスを見ると北海道に行きたくなりますが、今年は姑の事があるので、残念です・・・

夏つばきさん、4位ですよ〜
このポチで、3位になるかな?
Posted by ラベンダ♪ at 2007年08月02日 08:52
夏つばきさん、賢治ファンですね。

石狩晩夏なら知ってるけど・・・
これは、よく読まないと・・・

ハマナスの薔薇があるんですね。
とっても豪華ですもの・・・
ハマナスは一時庭に植えたこともあったけど、水揚げが悪くて・・・
だから海の側とかに咲くんですね。
HPのUPもあって、少々お疲れ気味
なのよ〜
Posted by さくら at 2007年08月02日 20:28
北海道の大好きなラベンダ♪さん
賢治は、1923年7月31日から8月12日にかけて、北海道を経由してサハリン(樺太)まで一人旅をしています。
 この旅行の目的は、樺太の王子製紙に勤務している先輩を訪ねて、農学校の教え子の就職を依頼するということでしたが、もう一つ、前年に亡くなった妹 とし子 の魂の行方を探そうとする旅だったそうです。
まさに季節的には今賢治は この旅行のあいだに、ハマナスを見て『春と修羅 』の「オホーツク挽歌」をスケッチをしていたんですね。
Posted by 夏つばき at 2007年08月03日 05:36
さくらさん 簡単にコピー貼り付け〜です。
なんだか解らない長いしごめんなさい。
でも大好きです賢治。
石狩挽歌はないけど (>_<) オホーツク挽歌のなかに「 津軽海峡」「 宗谷挽歌」も有るよ。
みんな悲しい詩です。
としこの魂を求めての旅ですから。

ハマナスはどんな悪い条件下でも繁殖旺盛で狭い庭には困りものです。
裏庭の少ないスペースに植えていますが隙間を見つけて芽が出てきます。
そのたびに引っこ抜いています。
でも花は綺麗です。
Posted by 夏つばき at 2007年08月03日 05:55
オホーツク挽歌 の歌詞は長いですね。
歌うときは、これを全部歌うのかしら...
やはり私は「知床旅情」の方が良いです。
ハマナスの花、とても綺麗ですね。
Posted by Miyoko at 2007年08月03日 06:09
あれ?昨日来た時よりたくさん書かれてますよね??

今日はすごく忙しくって、ポチだけして帰ります
後であらためて伺いますね・・・
Posted by ラベンダ♪ at 2007年08月03日 16:33
Miyokoさん
おもしろ〜〜い。
私も知床旅情大好きです。

オホーツク挽歌はじっくり最後まで詠んだことありません。
改めて書いてみましたが???やっぱし難しい〜〜
賢治ファンですが 頭は空っぽですから。
Posted by 夏つばき at 2007年08月04日 15:50
ラベンダ♪さん
ありがとう!
実は、昨日このページをいじくって自分の更新するページを開くことが出来ず焦ってしまいました。
今日何とかパスワードを思い出す更新することが出来たんですが・・・
更新しない間もポチ!に感謝。
ありがとう!
Posted by 夏つばき at 2007年08月04日 15:53
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