2008年03月31日

アンデルセン氏白鳥の歌

2008年 03月 03日.jpg
夕日と白鳥・高松の池 「盛岡心情」を運営されているらくださん撮影

アンデルセン童話で、私の好きな物語、「第二十夜」と、「第二十八夜」があります。

「第二十八夜」は、賢治の「アンデルセン白鳥の歌」のもとになったと言われています。

賢治の「アンデルセン氏白鳥の歌」の連作です。


「アンデルセン氏白鳥の歌」

690  「聞けよ」("Hore,")
       また、
     月はかたりぬ
     やさしくも
     アンデルセンの月はかたりぬ。
        

691   海あかく
      そらとけじめもあらざれば
      みなそこに立つ藻もあらはなり。
        

692   みなそこの
      黒き藻はみな月光に
      あやしき腕をさしのぶるなり。


693   おゝさかな、
      そらよりかろきかゞやきの
      アンデルセンの海を行くかな。


694   ましろなる羽も融け行き
      白鳥は
      むれをはなれて
      海にくだりぬ
        

695   わだつみに
      ねたみは起り
      青白きほのほのごとく白鳥に寄す。
        

695a   青白きほのほは海に燃えたれど
       かうかうとして
      鳥はねむれり
        

696   あかつきの
      琥珀ひかればしらしらと
      アンデルセンの月はしずみぬ。
        

697   あかつきの琥珀ひかれば白鳥の
      こころにはかにうち勇むかな。
        

698   白鳥の
      つばさは張られ
      かゞやける琥珀のそらに
      ひたのぼり行く。

                  (校本全集1「歌稿B」より)
2008年 03月 21日.jpg
2008・3・21 旅立ちの朝 「盛岡心情」を運営されているらくださん撮影


この「アンデルセン氏白鳥の歌」の「歌稿B」は、二番目の妹シゲの清書です。
冒頭の歌「("Hore,")の o は 上に点が二つついているドイツの文字だそうです。

「歌稿B」があると言うことは、 「歌稿A」も もちろんあります。

「歌稿A」は、直ぐ下の妹 トシの清書で書かれ「トシ筆写歌稿」と呼ばれています。
トシの清書は「大正6年7月の(645)までで トシが亡くなる年まで続いています。
トシが死んだのは、賢治がまだ農学校在職中の元気な頃ですが、病気で静養中の妹に、自分の短歌を清書させています。
病弱な妹に神経を使う仕事を頼んでいるなんて・・・・
トシの優しさ 兄思いが忍ばれます。

「第二十八夜」の、きれいなアンデルセンの世界も 、賢治の短歌の世界では、すこし不気味な雰囲気になっています。
このころの賢治の心が反映されていたのでしょう。

下に「第二十八夜」を載せております。
併せて読むと もっと賢治の「アンデルセン氏白鳥の歌」の連作が解ると思います。

宮沢賢治はアンデルセンに、岩崎ちひろさんは、賢治に触発され・・・と素晴らしい童話は引き継がれていくんですね。

文中のイメージ写真は「盛岡心情」を運営されているらくださんからお借りしました

賢治の「アンデルセン白鳥の歌」のもとになったと言われている、第二十八夜を紹介します。

第二十八夜

 「こんどは海のながめです。」と月が話しだしました。
「水は、わたしがその中を通りぬける、すんだ大気みたいにすきとおっていて、海のずっと深くのめずらしい植物まで見えましたよ。
それらの植物は、まるで海の中の大木みたいに、いくメートルもある長い茎を、わたしの方へさしあげていました。
そしてそのこずえの上を、魚たちが泳いでいくのです。



 空高く、野生の白鳥の群れが飛んでいきましたが、その一羽の羽が弱って、下へ下へと落ちてきました。
彼の目は、だんだん遠ざかってゆく空の隊商のあとをなおも追っていましたが、じぶんは翼を大きくひろげたまま、ちょうどおだやかな空を落ちてくるしゃぼん玉みたいに、だんだん沈んでゆくのでした。



 やがて白鳥は、水の面にふれました。
そして、頭を曲げて翼の中にさしこみながら、まるでしずかな湖に浮かぶ白い睡蓮の花のようにじっとそこに浮かんでいました。



 やがて風がでてきて、光り輝く水の面を、波うたせました。
まるでエーテルのようにきらめく幅の広い大波になって、遠くまでうねっていきます。
そのとき、白鳥は、頭をあげました。
きらきら光る水は、彼の胸や背中に、青い炎のようなしぶきを、浴びせかけました。


 あかつきの光が、赤く染まった雲を照らしました。
すると白鳥は、元気づいて起きあがり、上ってくる太陽をめがけて仲間が飛んでいった青くかすむ岸辺をめざして、飛び立ちました。
そして彼は、ただひとり、大きくうねる青い波を越えて、あこがれで胸をふくらませながら、飛んでゆくのでした。」

posted by mari at 09:09| 岩手 ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | 宮沢賢治作品とイーハトーブ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「白い友達、それは、君」


君は 雪のように白いから

みんなに 好かれる

子供にも 大人にも

あの冬空を 真白く染め飛び行く



烏(からす)のように 黒いと

こんなにも 好かれたのだろうか

黒い色は 悪しき者

白い色は 正義の色

みんなは そう言う



今年も また来るだろう

あの 北の国から

真白き 翼の君が

僕は 君に憧れる

まだ見ぬ 北に国に飛んでいけるから

北の 香りを連れてくれるから







Posted by ひろ at 2008年03月31日 19:20
類は友をよぶ と、云いますが繋がっているのですね〜

白鳥が飛び立つ写真、夏つばきさんが撮られたの?
ジャストタイミング!! うまいなぁ〜
Posted by mube at 2008年03月31日 21:26
ひろさん
白鳥〜〜って真実の象徴ですね。
名前も姿も家族思いの習性も・・・

いろんな鳥と比較された物語も多いですが、「白鳥の湖」が代表かしら・・
Posted by 夏つばき at 2008年04月01日 12:02
mubeさん
狭い視野ではなく広く世界に目が向けられていたんですね。

でも、賢治もアンデルセンの本が愛読書だったなんて想像すると面白くなってきますね。

写真ステキでしょう〜^〜
一度訪れてみて下さいね。
「盛岡心情」の写真。
Posted by 夏つばき at 2008年04月01日 17:06
白鳥って本当に優雅で美しい鳥ですよね。
ひろさんのコメントにもあるように子の真っ白な羽がなんとも清らかなイメ―ジをかもし出しますよね。

賢治さんはアンデルセンに触発されたのですか。

「しずかな湖に浮かぶ白い睡蓮の花のよう・・・」この一節素敵ですね。
情景が目に浮かぶようです。
賢治さんの純粋な心の目で見る世界・・・大好きです。
確か彼はオペレッタも書かれたとどこかで読んだのですがもしかしてご存知ですか?

こちらのブログでたくさん賢治さんについて教えていただけてとっても幸せです!
Posted by yuko at 2008年04月02日 06:23
yukoさん
賢治とオペレッタに関しては、詳しくありません。
yukoさんの方がお詳しいのでは。
少し調べてみましたが奥が深い・・・・
いつかこの件も更新しようかしら。

生活も安定していた教員生活の4年間において、生徒に歌劇を上演させています。
「この四年は、私にとって、じつに愉快な明るいものでありました」と自ら告白している 花巻農学校教諭時代にほぼ限られていたようです。

宮沢賢治は、東京上京の際は、浅草オペラに何度も通って、花巻農学校で「飢餓陣営」・「ポランの広場」・「植物医師」・「種山ケ原の夜」の四本を公開しました。

音楽に熱心だった賢治でしたが、その後 きびしい現実に直面し、コミカルなオペラ役者ではいられなくなって、作品からも明るいユーモアやパロディの余裕は遠のき、皮肉、ブラック・ユーモアが取って代わります。

 日々の生活苦にあえぐ農民たちやその子供である農学校の生徒たちに、農業とは創造であり、芸術であるという信念から、音楽を聴かせ、歌わせ、音楽劇の実践を試みた宮沢賢治です。
苦しみにこそ、音楽が癒しとなり、励ましとなり、明日の労働への糧となると信じた賢治なればこそ、オペレッタに可能性を見出したと言えるかもしれません。
Posted by 夏つばき at 2008年04月05日 10:24
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